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腸内細菌 その他

帝王切開が赤ちゃんの腸内細菌に与える影響

腸内細菌 その他

2025.05.23

帝王切開で生まれた赤ちゃんの腸内細菌に関する研究が進んでいます。これまでの研究で、帝王切開は自然分娩に比べて腸内細菌の構成が異なることが示されています。腸内細菌は免疫機能や代謝に重要な役割を果たし、赤ちゃんの健康に影響を与えるとされています。

帝王切開と腸内細菌の基本知識

帝王切開は、さまざまな理由から行われる出生方法の一つであり、母体や胎児の健康を守るために選ばれます。帝王切開での出産では、赤ちゃんは母親の産道を通ることなく外の世界に出てくるため、腸内細菌の受け渡しが自然分娩とは異なる影響を及ぼします。

腸内細菌は赤ちゃんの免疫機能や消化機能の発達に重要な役割を果たしています。特に、自然分娩で生まれた赤ちゃんは、母親からの有益な細菌を直接受け継ぐのに対し、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、外部環境の細菌に触れることの方が多くなり、腸内細菌の多様性が低下するリスクがあります。

腸内細菌のバランスを整えることは、赤ちゃんの健康な成長にとって非常に重要であり、今後の研究がこの分野で進められています。

腸内細菌とは何か?

腸内細菌は、私たちの消化管に生息する微生物の総称であり、主にバクテリアや古細菌が含まれています。これらの微生物は、消化や栄養吸収、免疫システムの調整など、さまざまな機能を担っています。


腸内細菌は、食物からの栄養素の分解を助けるほか、有益な物質を生成することもあります。たとえば、短鎖脂肪酸と呼ばれる物質は、腸内の健康を維持し、炎症を抑える効果があります。また、腸内細菌は免疫機能とも深くかかわっており、病原菌に対する防御機能を高める役割も果たしています。

しかし、腸内細菌のバランスが崩れると、さまざまな健康問題が引き起こされる可能性があります。特に、生活習慣や食事内容の影響を受けやすいため、腸内細菌を健康に保つことが、大切なサポートとなります。

帝王切開とは?

帝王切開とは、母体及び胎児の健康を守るために行われる外科的手法で、腹部を切開して赤ちゃんを取り出す方法です。通常、自然分娩が困難な場合や、母体の健康状態、胎児の位置などに問題があるときに選ばれます。

具体的には、妊娠中の合併症や異常の発見、胎児の大きさ、出産前の健康状態が重要な判断基準となります。帝王切開は、緊急の場合と計画的な場合があり、計画的な帝王切開は、あらかじめ手術日を決めて行われます。

この方法は、母体と胎児の安全を最優先に考えられていますが、出産後の回復には時間がかかることが多く、身体的な負担が伴うことを理解しておくことが重要です。また、帝王切開によって生まれた赤ちゃんの腸内環境が、自然分娩の場合と異なる可能性についても注目されるようになっています。

帝王切開の現状

現在日本では、4人に1人の赤ちゃんが帝王切開で生まれています。この数字は1990年代の2〜3倍にものぼります。WHOが推奨する帝王切開率は10〜15%で、北欧やオランダでの帝王切開率は10%台ですので、日本の帝王切開率はそれらを大きく上回っています。

但し日本以外の国、なかでも発展途上国や新興国では更に帝王切開率が増えているという現状があります。

エジプトでは、なんと70%以上もの妊婦が帝王切開を受けています。(参考:出産の72%が帝王切開 エジプト 医学的に必要ないのに広がる事情:朝日新聞デジタル

他にもドミニカ共和国、ブラジル、キプロス、トルコなどでは50%以上の高い帝王切開率になっています。
この状況が続けば、2030年までに東アジア63%、ラテンアメリカやカリブ海地域で54%、西アジアで50%、北アフリカで48%、南ヨーロッパで47%、オーストラリアやニュージーランドで45%まで数字が上がる可能性があるとWHOは予測しています。
Caesarean section rates continue to rise, amid growing inequalities in access

帝王切開が増えている理由には、逆子、双子、巨大児、および耐え難い痛みといった医学上の緊急性や必要性があります。

一方で、患者側の理由として、産休制度が整っていない国や、産休を使えない仕事をしている場合、仕事のスケジュールに合わせて出産したいとのニーズも多く予定帝王切開が選ばれやすいようです。

医療機関側の理由としては、訴訟リスクを回避したい、出産時間の短縮化、高額手術費用、等があると言われています。

出産方法と腸内細菌の関係性

出産方法によって、赤ちゃんの腸内細菌に大きな影響を与えることが知られています。

経膣分娩と帝王切開の比較

経膣分娩と帝王切開は、出産方法としてそれぞれの利点と欠点があります。経膣分娩は、母体に負担が少なく、通常、回復も早いとされています。また、自然な出産過程を経ることで、赤ちゃんは母体からのさまざまな微生物に接触し、良好な腸内細菌の構成を受け継ぎやすくなります。これにより、赤ちゃんの免疫機能向上が期待されます。

一方、帝王切開は、緊急性が求められる場合や、母子の健康にリスクがある場合に選択されます。この方法では、あらかじめプランされた手術により、出産が行われるため、予定通りに赤ちゃんを迎えることが可能です。しかし、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、自然分娩と比べると母体からの腸内細菌を十分に受け継げない可能性があり、腸内細菌の多様性が低下することが懸念されています。

このため、出産方法を選ぶ際には、医療専門家と相談し、それぞれの方法が赤ちゃんや母体に与える影響についてよく理解することが重要です。

出産方法が腸内細菌へ影響を与えるメカニズム

出産方法が腸内細菌へ影響するメカニズムは、主に出産時の微生物の接触とその後の環境によって決まります。

自然分娩と帝王切開では、腸内細菌の構成が異なり、それぞれの方法によって赤ちゃんが初めて接触する微生物が変わります。特に自然分娩では、母体の腸内細菌が経由することにより、赤ちゃんは母親からの有益な細菌を受け継ぎやすいとされています。

一方、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、病院の環境や医療設備に存在する細菌に触れることが多くなります。このため、腸内細菌の多様性が低下しやすく、将来的な健康リスクへの影響が懸念されています。

例えば、母乳にはビフィズス菌とその栄養源であるオリゴ糖が含まれているにもかかわらず、帝王切開で生まれた赤ちゃんは母乳を飲んでいてもビフィズス菌がなかなか増えてこないと言われています。

これは、生まれる瞬間に母親の便に含まれるビフィズス菌を摂取できないことで、赤ちゃんの未熟な腸内細菌叢の生態系の中で別の菌が先に増殖を始めてしまい、あとから来たビフィズス菌が増えづらくなってしまっている可能性が考えられるためです。

また、腸内細菌は免疫系の発達にも寄与すると言われています。

例えば帝王切開で生まれた赤ちゃんは、生後一年以内に感染症にかかりやすくなると言われています。病気のリスクは感染症にとどまらず、小児喘息、アトピー、アレルギー、Ⅰ型糖尿病、炎症性腸疾患(IBD)などの免疫応答に関する疾患リスクや、肥満の増加も報告されています。

さらには、学童期において認知能力の発達にも影響をおよぼす(14)ことが示され始めています。

出産方法が赤ちゃんの健康や発育にどのような影響を与えるのか、さらなる研究が期待されています。出産方法を選択する際には、これらの点も考慮しておくことが重要です。

帝王切開によるリスクと予防策

帝王切開は、必要に応じて行う命を守るための大切な手段ですが、いくつかのリスクが伴います。特に、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性がある腸内細菌のバランスの乱れが懸念されています。帝王切開により、赤ちゃんは母体からの自然な細菌の受け継ぎが減少し、結果的に腸内環境が整いにくくなることがあります。

このようなリスクを軽減するためには、いくつかの予防策があります。まず、出産後は早期に母乳を与えることが推奨されています。母乳には、赤ちゃんの腸内細菌を整える栄養素が含まれています。また、可能であれば、出産後の育児環境において、清潔であることに留意しましょう。

さらに、赤ちゃんの食事には発酵食品や食物繊維を取り入れることで、腸内細菌の多様性を増やすことが期待できます。このような取り組みを行うことで、帝王切開のリスクを軽減し、赤ちゃんの健康をサポートすることができるでしょう。

最初の研究が示す帝王切開の影響

帝王切開で出生した赤ちゃんの腸内細菌の形成過程は、自然分娩と比較して異なることが、Maria Gloria Dominguez-Bello氏(当時プエルトリコ大学、現ラトガース大学)らの研究で明らかになりました。

研究結果の概要

2010年に発表された「分娩方法が新生児のさまざまな体の部位において最初のマイクロバイオータの獲得と構成を左右する」と題されたこの研究論文(1)は、生まれたての赤ん坊の腸内細菌叢形成における帝王切開の影響を網羅的に検証した最初の研究として位置づけられています。

この研究は、あるハプニングの結果行なわれたものでした。

Dominguez-Bello氏は祖国でもあるベネズエラで20年にわたり、栄養学や微生物学の研究を行っていました。

その時もベネズエラに赴き、ジャングルの奥地で先住民たちの微生物を採取する予定だったのですが、ヘリコプターの予約がキャンセルされてしまい、ベネズエラの首都で三週間足止めされてしまった彼女は、バカンスを取るよりも「別の研究」に着手することを選びました。

地元の病院に行って、経膣分娩と帝王切開による分娩で生まれた赤ちゃんたちの細菌にどのような違いがあるか調べることにしたのです。

この研究には、21歳から33歳まで9人の母親と10人の赤ちゃんが参加し、母親の皮膚、口、膣の細菌や、新生児の皮膚、口、鼻、便(胎便)の細菌が調べられました。

その結果、帝王切開で生まれた赤ちゃんと経膣分娩で生まれた赤ちゃんでは、それぞれ細菌の構成が大きく異なっていることが示されました。

経膣分娩で生まれた赤ちゃんは、からだじゅうが母親の膣常在菌で覆われていたのでした。

研究検証の難しさ

しかしこの結果は、これに続くさまざまな別の研究者たちから、すべて支持されたわけではありませんでした。

生後すぐの赤ちゃんから1歳未満の赤ちゃんまでを対象に、帝王切開による分娩と経膣分娩の差が腸内細菌叢にどのような影響を与えるのか、世界中の研究者が検証を試みました。

その結果は、研究ごとにまちまちとなりました。

この検証をむずかしくしているいくつかの要因があります。

まず、生まれてから数日、あるいは数ヶ月の赤ちゃんは、腸内細菌叢(検証対象は細菌)がめまぐるしく変わります。

生まれてから24時間以内に出る「胎便(たいべん)」の腸内細菌の構成は、翌日にはがらりと変わっています。

胎便は最近まで無菌だと考えられていましたが、ある研究では3人に2人の割合で、わずかに検出可能なレベルで細菌が含まれることがわかっています(3)。

第二に、腸内細菌の構成は個人差が大きいため母親が違えば、受け取る細菌も違います。

第三に、胎便は細菌の数そのものが少ないため、解析対象の菌数も少なくなり、解析過程でのコンタミネーションなどの影響が大きくなってしまい、結果の信頼性が下がってしまうのです。

膣内細菌叢を赤ちゃんに移す方法

次の事例はアメリカからのものになります。
カリフォルニア大学教授(当時コロラド大学教授)のRob Knight氏の娘は、2011年に緊急帝王切開で誕生しました。

Knight氏は世界的に著名な微生物学者で、2007年に発足したHuman Microbiome Projectにも主要メンバーとして関わっています。

実は、Knight氏はその前年に出されたDominguez-Bello氏の論文(前述のベネズエラでの研究)の共同著者としても名を連ねています。

彼が帝王切開による腸内細菌叢への影響を知らなかったはずはないのですが、この時彼は、研究者というよりもひとりの父親として行動しました。

手術のあと、妻と娘と三人きりになった病室で、彼は妻の膣を綿棒でぬぐって娘の体に塗りつけました。

開腹手術である帝王切開は、当然ながら母親に感染症のリスクがあるため、執刀医をはじめとしたスタッフは、自身や器具、部屋の消毒や殺菌を念入りに行ない、生まれてくる赤ちゃんも清潔に取り出されたはずです。

彼の行為を病院スタッフが知っていたら、いい顔はしなかったでしょう。

しかし父親として娘が将来受けうる不利益をできるだけ避けようとした彼の行動を責めることは、誰にもできないのかもしれません。

この、おそらく世界ではじめての「膣内細菌叢移植」は、どの研究にも含まれていません、研究計画なしの行為でした。

その後、2016年に、Dominguez-Bello氏やKnight氏を含む研究チームは、この「膣内細菌叢移植」を帝王切開で生まれた4名の新生児に実施したという論文を出しました。

新生児の体の一部で母親の膣由来の細菌叢が定着し、経膣分娩で生まれた赤ちゃんと同じような構成になったという報告がされています。

彼らはこの方法を”vaginal seeding”(膣の種まき)と呼び、現在に至るまで着実に研究データを積み重ね続けています。

彼らは帝王切開の他にも、粉ミルク育児や分娩時の抗生物質の影響をできるだけ避けたり、受けた影響を少なくするための方法を模索しています。

一方で、”vaginal seeding” (膣の種まき)はまだ効果や安全性、機序がわからない面も多く、実施は慎重になるべきだという声もあります。

アメリカ産婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists, ACOG)は、”vaginal seeding”はあくまで研究計画に含まれるケースでのみ実施されるべきで、一般的な医療の場や自己判断で行うべきではないとコメントを出している。(参考:Vaginal Seeding | ACOG)

西オーストラリア大学の研究者らは、2018年に発表した論文(2)内でかなり批判的な立場を取っています。

彼らは帝王切開による分娩と経膣分娩の研究をいくつか取り上げたうえで、両者のマイクロバイオーム形成に本当に差があるのかをまず問題としています。さらに帝王切開そのものではなく、その他の因子に本当の原因がある可能性も考えるべきだと主張しています。

帝王切開を余儀なくされた要因(母親側の年齢や疾患、肥満などのリスク因子)、帝王切開の際に服用する抗生物質、陣痛がないこと、母乳の影響、個人間・個人内の腸内細菌叢の多様性などがその因子として考えられるでしょう。

別の研究チームは、これらの因子のうち抗生物質の影響を排除しても両者の腸内細菌叢形成に明らかな違いがあることを示しています。彼らは母乳、きょうだいやペットの有無、産後の入院日数の長さ、おしゃぶりに至るまでさまざまな因子を検討し、さらには”vaginal seeding”に加え、”fecal seeding”(うんちの種まき)の可能性にすら言及しています。

腸内細菌を改善するための対策

腸内細菌を改善するための対策は、赤ちゃんの健康を守るために重要です。

まず、母乳育児を推奨します。母乳には、赤ちゃんの腸内細菌を育てるための免疫成分やプレバイオティクスが含まれているからです。できるだけ長期間の母乳育児が、腸内環境の改善に寄与します。

さらに、離乳食を開始する際は、様々な種類の食材を取り入れることが大切です。特に、野菜や果物、全粒穀物を積極的に与えることで、バランスの取れた腸内細菌の育成に繋がります。

また、適度な運動も腸内細菌の改善に寄与します。赤ちゃんがハイハイや歩くことで、腸内環境を整える助けとなります。最後に、ストレスを軽減する環境を提供することも重要です。穏やかな家庭環境が、赤ちゃんの健康な腸内細菌を育てる助けになります。

プロバイオティクスの導入

プロバイオティクスの導入は、腸内細菌のバランスを整えるための有効な手段として注目されています。プロバイオティクスとは、腸内環境を改善する良い細菌のことを指し、ヨーグルトや発酵食品に豊富に含まれています。

赤ちゃんが腸内細菌を育てるためには、適切な時期にプロバイオティクスを提供することが大切です。離乳食が始まるタイミングから、少量のプロバイオティクスを含んだ食品を取り入れると良いでしょう。例えば、無糖のヨーグルトや発酵した豆腐などが選ばれます。

また、プロバイオティクスの摂取は、免疫力を高める効果も期待できます。腸内環境が整うことで、感染症のリスクが低下し、赤ちゃんの健康をサポートします。導入の際には、小児科医や栄養士と相談しながら、適切な量と種類を選ぶことが重要です。大切なお子様の成長に役立てていきましょう。

健康的な食生活の推奨

健康的な食生活は、赤ちゃんの腸内細菌の改善に大きな役割を果たします。まず、母乳育児を推奨します。母乳には、赤ちゃんに必要な栄養素や免疫物質が豊富に含まれており、腸内細菌のバランスを整える助けとなります。可能であれば、母乳育児を長期間続けることが望ましいです。

離乳食に移行する際は、栄養価の高い多様な食材を取り入れることが重要です。例えば、野菜や果物、全粒穀物は腸内の善玉菌を育てる素晴らしい選択肢です。一方、加工食品や砂糖の多い食事は、腸内細菌のバランスを崩す原因となることがあるため注意が必要です。

また、食事の時間を大切にし、家族で一緒に食卓を囲むことで、赤ちゃんは食事に対するポジティブな印象を持つようになります。このような健康的な食生活を心がけることで、赤ちゃんの成長を支え、腸内環境を改善する手助けになります。

医師との相談

腸内細菌の改善に関する対策を講じる際、医師との相談が非常に重要です。特に、帝王切開で出産した方や赤ちゃんの腸内環境が気になる方は、専門家の意見を聞くことでより具体的なアドバイスを得ることができます。医師はそれぞれの家族の状況に応じた最適な育児方法を提案してくれるため、しっかりと相談することをお勧めします。

また、腸内細菌に影響を与える食事や生活習慣についても、医師から指導を受けることが可能です。例えば、赤ちゃんに与える食材や母乳育児の期間についての適切なガイダンスを受けることで、より健康的な腸内環境を築く手助けとなります。

さらに、もし赤ちゃんに体調の変化や心配な症状が見られた場合は、躊躇せずに腸内細菌叢に詳しい医師に相談することが大切です。早期の対処は、腸内細菌のバランスを整える上で非常に効果的です。引き続き健康的な育児を進めるためにも、定期的な医療機関の受診を心掛けましょう。

まとめ

帝王切開と腸内細菌についての研究は、赤ちゃんの健康において重要な意義を持っています。特に、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、自然分娩とは異なり、母親から受け継ぐ腸内細菌が異なるため、腸内細菌のバランスが崩れてしまう可能性があります。

腸内細菌の構成は、免疫機能や消化・吸収に影響を及ぼし、長期的な健康にも関与しています。そのため、出産方法が赤ちゃんの腸内細菌に与える影響を理解することは、育児や健康管理において非常に重要です。

今後の研究を通じて、帝王切開による腸内細菌の変化が具体的にどのような健康リスクをもたらすのか、さらにどのようにそれを補うことができるかに焦点が当たることでしょう。これらの知見が育児の実践にどう生かされるか、今後の展開に注目です。

腸内フローラ移植臨床研究会では、抗菌薬を使わない、患者さんへの負担の少ない新しい「腸内細菌叢移植」を既に690件以上実施しています。帝王切開が赤ちゃんの腸内細菌に与える影響に関心の高い妊婦の方や、ご自身の腸内細菌叢の状態や、腸内細菌叢移植にご関心のある方は、ぜひお近くのクリニックにお問い合わせ下さい。

参考文献

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監修者:農学博士 嶋秀明(シンバイオシス株式会社)

公開日:2025年4月9日
更新日:2025年6月23日

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