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症例別FMT自閉スペクトラム症(ASD)

【第7回学術大会インタビュー】矯正から治療へ、自閉スペクトラム症への適応研究に期待

自閉スペクトラム症(ASD)

2024.02.28

iStep アイステップ名古屋代表 小島育子氏

世間からの障がいへの無理解、偏見、たらい回しに遭った経験した経験から、障がいを持つ子どもを育てる親のためのコミュニティ・iStepアイステップ名古屋を立ち上げた小島育子さん。オフライン・オンラインでつながる場を設け、未来をともにつくる環境を親御さんに提供しています。コミュニティ代表であり、移植に挑戦したお子さんの親でもある小島さんに学術大会にてお話しをうかがいました。

――息子さんが臨床研究に協力なさっているとうかがっています。

はい。2023年7月で移植を終え、2024年1月の臨床研究報告へ向けて先生とやりとりを重ねています。10歳になる息子は、重度の知的障がいを伴う自閉スペクトラム症です。赤ちゃんのころから便秘がひどく、ずっと薬の力を借りて便を出していました。自閉スペクトラム症の影響もありますが、お腹に便がたまっていると癇癪がひどいんです。同じ境遇の親御さんに聞いてみても、便で悩んでいる方が多かったため、素人ながらに「自閉スペクトラム症と便には関係性があるのでは」と考えていました。だからこそアイステップの仲間から腸内フローラ移植臨床研究会のこと、研究会で臨床研究への協力者を募っていることを聞いた時、ためらわずに応募したのです。

――移植を受ける前の息子さんの様子を教えてください。

便秘以外では、かなりの偏食があります。食事療法も行いたいところですが、「初めて見る食材・料理は食べられない」など想像の特異性からくる「こだわり」から食べ物を口に入れてくれないのです。その意味でも、おしりから菌液を入れる腸内フローラ移植は治療として最適だと思います。言葉は、模倣やオウム返しはできるがやりとりは難しく、「うんち」など、単語が少し出るくらいでした。
便は、薬の力を借りてようやくうんちが出ます。臨床研究に臨む際、薬をやめる必要があったので、その点は少し不安がありました。

――腸内フローラ移植自体について知ったのはいつごろですか?

息子が2~3歳のころ、 特に便秘がひどく、本当に悩んでいました。なにか解決策はないかとインターネットで調べるうちに、見つけたのが便移植です。まだ腸内フローラ移植という言葉が聞きなれない時代でしたから、その便移植は、私の目には画期的な方法として映りました。なにしろ息子は偏食ですから、口から薬を摂ってもらうのが難しい。お尻から入れる方法は、本当に画期的に思えました。ただ当時は移植を受けるためとはいえ、名古屋から大阪まで遠出をする勇気が持てませんでした。
ですが、今回の臨床研究の応募には、そうした前知識もあったため、ためらいはなかったですね。

――移植後、息子さんに変化はありましたか?

まず、便に変化がありました。移植後すぐではありませんが、コロコロうんちが水分を含んだ便になってきたのです。コロコロした便とバナナ状につながった便とが出るので安定はしていないものの、いまでは毎日少量でも必ず便通がありますね。便が出ると、本人もすっきりするのか機嫌もよくなります。
言葉にも変化がありました。移植を受けていた期間は毎週、名古屋・新大阪間を新幹線で移動していましたが、その移動が楽しかったようです。荷造りをして「新幹線」と口にするなど、何を求めているかの意思疎通ができるようになってきました。下着を汚した際に、「茶色いうんち」と言って、夫を呼んだこともあります。私は残念ながら仕事で不在だったのですが、これまでは「うんち」とは言っても、「茶色」をはじめ形容詞がつくケースはありませんでした。言葉が一つあるだけで、息子が何を求めているのかが分かる。理解してあげるスピードが早くなる。言葉の変化は、私たち家族の意思疎通をかなりスムーズにしてくれています。

――腸内フローラ移植臨床研究会への期待や、ご自身の今後の展望について

腸内フローラ移植臨床研究会が、自閉スペクトラム症に着目して研究を進めてくれている点が、本当にありがたいです。自閉スペクトラム症に限らず、障がいに悩む親御さんはたくさんいます。これまでは「障がいは治らない」との考えのもと、障がいを持つ子どもの行動を矯正していく方法が一般的でした。そんな現状に、「治療方法として」腸内フローラ移植が登場したのは、とても大きな一歩だと考えています。体験談など詳細を知りたい親御さんも一定数いらっしゃるはず。息子の事例を発信して、そうした親御さんたちの選択の助けになっていきたいと思います。

第7回学術大会【開催報告】はこちらから


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