腸内フローラ検査は最近注目されていますが、「意味がない」という意見も少なくありません。
腸内フローラは個々の健康状態に大きな影響を与えていますが、検査結果が具体的な改善策に結びつかない、腸内フローラのバランスは日々変化するため、検査結果が全てを示すわけではない、などが主な理由のようです。
腸内フローラ検査とは何か
腸内フローラ検査とは、腸内に生息する微生物のバランスや種類を調べる検査です。腸内フローラは、消化や栄養の吸収、免疫機能など様々な健康に関与しています。
この検査を通じて、腸内細菌の多様性や比率が明らかになり、個々の腸内環境の状態を知ることができます。
近年では、腸内フローラと健康の関連性が注目されており、健康維持や病気予防のための情報として活用されています。
一般的な腸内フローラ検査の概要
一般的な腸内フローラ検査は、主に便を採取して行われます。便の中には、多様な腸内細菌が含まれており、その分析を通じて腸内環境の状態を把握できます。
検査の結果は、腸内細菌の種類や割合、さらには善玉菌や悪玉菌のバランスなどが示されます。これにより、腸内フローラの特性に基づいた食事改善や生活習慣の見直しが促されることがあります。
最近では、自宅で簡単に検査ができるキットも増えており、より多くの人々が自身の腸内環境を知る機会を得ています。
一般的な腸内フローラ検査の目的と課題
一般的な腸内フローラ検査の目的は、腸内の微生物叢バランスを理解することです。これにより、消化不良やアレルギーなどの健康問題の原因を探る手助けになります。検査結果から改善策を提案されることで、食事内容を見直すきっかけにもなります。
しかし、検査にはいくつかの課題も存在します。
腸内フローラは個体差が大きく、結果が常に皆に当てはまるわけではありません。また、結果を解釈する医師や専門家の正しい知識も必要です。これらの要因が、腸内フローラ検査の信頼性を左右することがあります。
一般的な腸内フローラ検査の限界
一般的な腸内フローラ検査にはいくつかの限界があります。まず、検査結果は特定の時点の腸内環境を反映するため、日々変動する腸内フローラの状態を把握しているとは言い難いでしょう。
また、多くの検査では腸内の細菌の種類や数にフォーカスされていますが、これが健康に与える影響は個人差が大きく、結果をどのように解釈するかはこの分野に精通した専門的な知識がないと、結果を正確に理解し、評価することができない場合もあります。
腸内フローラ検査結果の解釈の難しさ
検査結果の解釈にも多くの難しさが伴います。腸内フローラの構成は人それぞれ異なり、たとえ同じ細菌の割合でも健康状態に与える影響は一律ではありません。
さらに、検査結果に基づいて行動する際、どのような改善策がその人に必要かを詳しく問診することなく正確に判断するのは難しいでしょう。
例えば、特定の細菌が不足している場合、市販のサプリメントを利用することが一般的ですが、それが本当に効果的かどうかは個々の健康状態に大きく依存します。
そのため、検査結果を受け取った際は、専門家のアドバイスを仰ぎ、慎重に対策を考えることが重要です。誤った解釈では健康促進につながらない可能性もあります。
体感と検査結果のギャップ
腸内フローラ検査を受けた人々の中には、体感と検査結果にギャップを感じる方もいます。
例えば、検査の結果、腸内環境が不良とされても、日常生活では快適さを感じている場合があります。逆に、検査で腸内環境が良好とされるのに、体調不良に悩まされることもあります。
このような食い違いは、腸内フローラ以外の要因、例えば食生活やストレス、運動不足など、が影響している可能性があるからです。
結果にとらわれすぎず、自分の体調に耳を傾けることも重要です。
サプリと食生活指導だけでは不十分
腸内フローラを改善するために、サプリメントや食生活指導が推奨されることが多いですが、これだけでは不十分な場合があります。
サプリメントは便利ですが、腸内環境は単に栄養素の摂取だけでは整いません。実際の食事内容や生活習慣が大きく影響します。
例えば、食物繊維や発酵食品を積極的に摂取すること、ストレス管理や十分な睡眠も腸内フローラに良い影響を与える要素です。生活習慣全体を通じた、もっと総合的なアプローチが求められています。
腸内フローラ移植臨床研究会で採用されている腸内フローラ検査とは?
私たちの腸内フローラ移植技術が活用されている腸内フローラ移植臨床研究会では、患者さんの腸内環境を可視化するために、専門の検査ラボが行う16S rRNA 解析を採用しています。
この検査は特定の菌だけを調べる簡易検査に比べて、腸内細菌全体のバランスと多様性を把握できる点が特徴です。そのため、食事・生活習慣の総合的な見直しや、腸内フローラ移植の適否判断に役立ちます。
16S rRNA 解析では、数百種の腸内細菌を検出することが可能ですが、これらの多数の菌を近縁のもの(あるいは菌の持つ機能)を指標にしてグループに分類します。このようなデータ処理を施すことにより、下図に示すように、各人の腸内細菌の分布の様子が判別し易くなり、全体のバランスと多様性を把握できるようになります。
参考:移植前、移植後の腸内フローラバランス検査結果の比較

腸内フローラ移植臨床研究会の腸内フローラ検査では、腸内細菌の種類や割合を把握し、その結果をもとに具体的な改善策が提案できます。
一般的な腸内フローラ検査との決定的な違い
一般的な腸内フローラ検査は、主にどの細菌が存在するかを調べることに焦点を当てています。
しかし、腸内フローラ移植臨床研究会の腸内フローラ検査では、機能ごとに分類されたそれぞれの菌種の存在量を解析することにより、免疫力、代謝能、メンタルヘルス状態など、検査時点での健康状態を推測することができます。
これにより、健康に影響を与える特定の細菌叢の不足や過剰を明らかにし、研究会に所属する医師は改善に向けた具体的なアドバイスが可能になる点が大きな違いです。
最適化された腸内フローラ移植のためのデータ取得
腸内フローラ移植は、腸内環境を改善することによって疾病状態を緩和する手段の一つとして注目され始めています。例えば、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群、アレルギー疾患や自閉スペクトラム症などの患者さんでは、何らかの原因で腸内フローラバランスが大きく崩れている場合がありますが、腸内フローラ移植によりこれらの疾患が緩和されるとの報告が多数あります。このプロセスでは、腸内フローラの状態に基づいて最適なドナーを選定することが重要です。
そのためには、移植前の検査によって詳細なデータを取得し、どの菌が不足しているのか、または過剰であるかを個々の患者に合わせて分析する必要があります。
これにより、カスタマイズされた菌液で、腸内フローラ移植が可能となり、より効果的な腸内環境の改善が期待できるのです。
腸内フローラ検査を最大限に活かすためには?
腸内フローラ検査を最大限に活かすためには、まずどういったことが分かる検査なのか、得られた結果は他の誰にでも当てはまる一般的なことに過ぎないのではないか、個人個人の生活改善にどのように活かせるのか、活かせる根拠は何か、を検査を受ける前に納得いくまで情報収集することが重要です。
そして検査結果を鵜呑みにするのではなく、医師を始めとする専門家の意見も必ず参考にしましょう。
腸内細菌のバランスは、食生活やストレス、運動習慣によって変化しますが、崩れた腸内環境を効果的に改善するのに最適だからです。
その際はお近くのクリニックにご相談の上、腸内フローラ移植に関心がある、とご相談下さい。
腸内フローラ移植を行うことで、健康な細菌叢を直接取り入れ、腸内環境を根本からリセットできます。また、移植後の変化をモニタリングし、必要に応じて再評価を行うことで、より効果的に腸内環境を最適化できます。
まとめ
腸内フローラ検査については、その意味や有効性についてさまざまな意見があります。一般的な腸内フローラ検査は、情報としては有益だが、活かし方を間違えると「意味がない」と感じてしまうかもしれません。
具体的な改善策につながる腸内フローラ検査を選ぶことで、真の意味での健康改善が実現することもあります。
いずれにせよ、長期的な健康維持につながる腸内フローラ検査を選択し、自分に合った腸内環境改善のステップを進めて行きましょう。
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監修者:農学博士 嶋秀明(シンバイオシス株式会社)
公開日:2025年5月12日
更新日:2025年5月21日