食物不耐症とは
イギリスのNHS(National Health Service)のサイトでは食物不耐症(Food intolerance)を下記のように解説しています。
A food intolerance is difficulty digesting certain foods and having an unpleasant physical reaction to them. Food intolerance – NHS
「食物不耐症とは、特定の食べ物の消化がうまくできずに、不快な肉体的症状を引き起こす」
不快な症状としてよくあるのは、腹痛、下痢、おなら、腹部膨満感、皮膚のかゆみ等です。
近年、食物不耐症を持つ人の数はとても増えています。
けれど食物不耐症には科学的な診断方法がなく、多くの人が「自分は食物不耐症」と思っていても、実は別の原因が隠れていることが多く、正確な人数を把握するのは難しいとのことです。
アレルギーと食物不耐症は根本的にメカニズムが違います。NHSのサイトから、その2つの違いを抜粋します。
食物アレルギーと判断できる場合
- 免疫反応により症状が起こる。
- ほんの少し食べただけで、その直後に発疹や息苦しさが起こる。
- 原因となる食べ物がある程度限られている。
- 命に関わる場合もある。
食物不耐症と判断できる場合
- 免疫反応を起こさず、命に関わる心配がない。
- 食べ物を摂取したあと、数時間後くらいにゆっくり症状が出る。
- ちょっと食べたくらいでは症状が起こらない。
- 様々な食べ物に対して起こる。
食物不耐症は、アルコールやカフェイン、人工甘味料、香料、着色料なんかに反応する場合も多いようです。
抗生物質と腸内細菌叢の移植により食物不耐症が改善したケース
FMT(便移植、腸内フローラ移植)が食物不耐症にも役立つ可能性があるという症例報告があります。
オーストラリアのシドニーにある消化器病センターに所属するClancy A.とBorody T.のレポートです。
患者さんプロフィール
- 35歳女性、IBSと診断を受けている。
- 18ヶ月にわたり、吐き気、腹痛、頭痛、疲労感などを覚えている。
- 乳製品、グルテン、卵、大豆に食物不耐症があると訴えている。
この患者さんに、12ヶ月にわたって抗生物質と腸内細菌叢の移植の組み合わせを、頻度を下げながら実施しました。
最初の6ヶ月で32回の腸内細菌叢の移植、あとの6ヶ月は自宅での浣腸による方法で月に1〜2回程度の頻度です。
腸内細菌叢の移植を始めて12週間後の時点で、彼女の便の状態、腹痛、吐き気、疲労感はいずれも80%から90%改善されたと、患者自身から報告がありました。
24週間後の時点で、グルテンと乳製品に対する食物不耐症が劇的に改善されました。
52週間後の時点では、グルテンと乳製品を摂取してもまったく症状が出なくなりました。
詳しいプロトコルや評価方法については、論文本文をご覧ください。
食物不耐症はIBSを併発していることが多い
IBS(過敏性腸症候群)は、世界人口の12%が罹患していると言われています。
日々の生活に支障をきたすにも関わらず、いまだ対処療法のみが施される場合が多い疾患でもあります。
最近になって腸内細菌との関連性が指摘され、FMTの臨床試験も数多く行われるようになってきました。
一方で、食物アレルギーとは違う食物不耐症の人口も急増しており、20%もの人々が食物不耐症に苦しんでいると言われています。
そしてその症状は、IBS患者さんに多く見られるとのこと。