城谷昌彦医師|IBS・潰瘍性大腸炎のQOLを変えるFMT治療の現在地

日々の診療の中で、従来の標準治療だけでは十分に対応しきれない慢性的な消化器疾患。特に、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症…

日々の診療の中で、従来の標準治療だけでは十分に対応しきれない慢性的な消化器疾患。特に、潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群(IBS)を患う人々は、検査数値や画像所見だけでは見えにくい深い不安と、生活上の大きな制限を抱え続けている。

城谷バイオウェルネスクリニックの城谷昌彦医師が「腸内フローラ移植(FMT)」という新たな治療領域に関心を持った大きなきっかけ―――それは、他でもない先生自身が回腸嚢炎の治療法の一つとしてFMTを自ら受けた経験にあった。

自ら患者としてFMTを体験した医師は、臨床でNanoGAS®-FMT(水素ナノバブル水を用いた腸内フローラ移植)をどう活かし、患者の人生をどう変えているのか。そして、なぜ今、期待ばかりをあおることなく「慎重なエビデンスの検証」を訴え続けるのか。

「医療の成果は、単に症状や検査数値の改善だけではありません。患者さんが本来取り組みたかったことに再び向き合えるようになること、将来に前向きな気持ちを持てるようになることこそが、非常に大切な成果なのです。」

城谷医師の医療哲学と、2026年9月に開催される「第10回 一般財団法人腸内フローラ移植臨床 学術大会」に向けた見どころに迫る。

数値や画像には映らない「患者の不安」に向き合う

自らがFMTを受けた経験―――腸内細菌という「切り札」

「私自身、回腸嚢炎に対する治療法の一つであるFMTを大学の治験を通じて受けたことが、腸内フローラ移植に関心を持つ大きなきっかけでした」と、自らの患者体験と、消化器専門医としての深い葛藤を振り返る。

日々の診療において、従来の標準治療だけではどうしても対応しきれない患者の症状や経過に向き合うことは決して少なくない。中でも、潰瘍性大腸炎やIBS(過敏性腸症候群)の患者は、内視鏡検査や血液検査の数値だけでは測れない「いつお腹が痛くなるか分からない」「外出や外食が怖い」といった日常生活上の制限や精神的な不安を常時抱えている。

「腸内フローラを整えることは、単なる消化器症状の改善にとどまらず、患者さんのQOL(生活の質)を根本から向上させる可能性を秘めている」。自らの体験と臨床での実感から、腸内細菌へのアプローチを従来の治療を補完する「切り札」の一つとして見出すようになった。

NanoGAS®-FMTという新たな選択肢の可能性

大学の治験でFMTを受けたものの、大きな改善は見られなかったが、その可能性を感じることはできたという。数あるFMTの中でNanoGAS®-FMTを導入した理由は、「臨床現場での扱いやすさ」と「患者への負担軽減」にあったという。

従来の移植法と比較しても、患者への心身の負担に配慮しながら実施できる可能性を感じたことが大きな決定打となった。これまで既存の治療法を試しても十分な改善が得られなかった患者に対して、「腸内環境の再構築」という全く新しい選択肢を提示できるようになった意義は極めて大きい。

しかし、城谷医師は戒めを忘れない。 「一方で、FMTを『万能の治療法』のように扱うべきではないとも考えています。すべての患者さんに同じ結果が出るわけではありませんし、適応の見極め、既存治療との組み合わせ、そして治療前後の評価は極めて慎重に行う必要があります」

将来への不安を抱えた若い潰瘍性大腸炎患者の劇的な変化

これまで数多くの患者と向き合ってきた中で、特に印象に残っているエピソードとして、城谷医師はある若い潰瘍性大腸炎の患者の症例を挙げる。

その患者は、激しい腹痛や下痢といった症状そのもののつらさだけでなく、学業や将来の進路に対する深い不安と絶望感を抱えていた。若い時期に慢性的な腸の不調を抱えることは、日々の生活だけでなく、進学、就職活動、友人やパートナーとの人間関係にまで多大な影響を及ぼす。

「NanoGAS®-FMTを行う中で、徐々に腸の症状が改善し、それにつれて学業や就職活動に対しても前向きに取り組めるようになっていきました。診察室でお会いするたびに表情が明るくなり、かつての笑顔が戻っていく姿を見たことは、今でも非常に強く印象に残っています」

「一生治らないのではないか」――そんな絶望を抱えて来院した患者が、NanoGAS®-FMTを通じて笑顔を取り戻していく。城谷医師の臨床現場では、単なる医学的数値を越えた「人生の活力を取り戻す医療」を積み上げている。

諦めかけた患者に寄り添う、誠実な医療のあり方

城谷医師が日々の診療で貫いているのは、「希望を提示しつつも、決して過度な期待をあおらない誠実な伴走」である。

「医療の成果とは、単に検査数値が良くなることだけではありません。患者さんが『本来やりたかったこと』に再び向き合えるようになること、将来に対して少しでも前向きな気持ちを持てるようになること。これこそが医療の持つ本当の価値だと考えています」

すべての人に等しく劇的な変化が起こるわけではないからこそ、「どのような患者さんに真に有効性が期待できるのか」、症例を一つひとつ丁寧に積み重ねながら検証を続ける姿勢を何より大切にしている。

未知の領域だからこそ求められる丁寧な検証―――NanoGAS®-FMTの評価

消化器専門医として多くの臨床経験を持つ城谷医師だが、水素NanoGAS®水(水素ナノバブル水)を用いたNanoGAS®-FMTの評価については、医療従事者として極めて冷静かつ謙虚な姿勢を崩さない。

「従来法とNanoGAS®水を用いた移植法を軽々に比較することは控えたいと考えています。その前提で申し上げると、水素NanoGAS®水には未知の部分が多い一方で、大きな可能性を秘めているものだと認識しており、臨床上の確かな手応えを感じる場面は多々あります」

その一方で、「現時点で過度に優位性を断定するべきではない」と警鐘を鳴らす。 

「NanoGAS®-FMTを医療としてより高いレベルで信頼される形にしていくためには、症例の着実な蓄積、客観的な評価、そして長期的な経過観察が必要です。現時点では可能性を確信しながらも、慎重に科学的な臨床データを積み重ねていく段階だと考えています」


新しい治療法であればあるほど、患者や医療者の間でも「期待」だけが先行しやすい傾向がある。だからこそ、素晴らしい改善結果だけでなく、現時点での「限界」や「課題」も含めて丁寧に検証していく姿勢が不可欠なのだ。

「メニューの追加」ではなく「責任ある提供体制」を

現在、多くの内科や消化器科のクリニックが既存診療に限界を感じ、新しい自由診療としてFMTの導入を検討している。そんな同業の医師たちや、次世代の医療を担う若手医師へ向け、城谷医師はあえて「厳しい助言」と心構えを送る。

「正直に申し上げると、現時点でどの医療機関にも軽々に『導入しやすいのでお勧めです』と言える分野ではないと考えています」

その理由は、患者の期待値が高くなりすぎた場合、効果を得られなかった際の落差によって医療者側・患者側双方が困難に直面することがあるためだ。

そのため、これから導入を検討する医師には、「新しい自由診療メニューを増やすという商業的な視点を捨てること」を伝えている。

「どのような患者さんに対して、どのような目的で行うのかを明確にすることが何より重要です。特に大切なのは、適応の慎重な見極め、事前の丁寧な説明、治療前後の評価、そして『期待値の調整』です。治療効果を絶対約束するのではなく、現時点で『分かっていること』と『分かっていないこと』を誠実に説明することを心がけています。運用のしやすさだけを強調するのではなく、医療として責任を持って提供できる体制を整えることが最も大切なことなのです」

エビデンスを現場で育てていく覚悟―――次世代医師へのエール

まだ発展途上の医療であり、はっきりとしたエビデンスを積み上げるための試行錯誤が続くFMT領域。それでもなお、城谷医師がフロントランナーとして挑戦を続ける理由はどこにあるのか。

「すでに確立された標準治療だけでは十分に改善しない患者さんが目の前にいる中で、腸内フローラという視点は、今後の医療において間違いなく重要な可能性を持っています。エビデンスがまだ十分でないからといって、可能性そのものを閉ざしてしまうべきではありません」

次世代を担う医師たちへ、城谷医師はこう力を込める。 

「新しい領域に対して、『期待』と『慎重さ』の両方を持って向き合っていただきたいと思います。腸内フローラ移植は、まだ完成された治療ではありません。だからこそ、私たち現場の臨床医が誠実に、大切に育てていくべき領域なのです」

苦労と試行錯誤の先に見出された工夫(第10回学術大会の見どころ)

2026年9月27日開催の第10回学術大会では、城谷医師が登壇します。

発表では、潰瘍性大腸炎へのNanoGAS®-FMT導入における試行錯誤や苦労した事例をありのままに講演します。

特に「水素ナノバブル水を使用するタイミングの工夫」など、実臨床で治療効果を高めるための実践的な知見を具体的にご紹介します。

既存治療に悩む臨床医にとって、真の可能性を学ぶ貴重な機会となるはずです。

第10回 一般財団法人腸内フローラ移植臨床研究会 学術大会のご案内

2026年9月27日(日)、腸内フローラ移植臨床研究会 第10回学術大会が開催されます。

本大会では、潰瘍性大腸炎をはじめとする疾患へのNanoGAS®-FMTの臨床成果や、腸内細菌叢研究の最新知見、臨床現場での実践事例が共有される予定です。

城谷昌彦医師が語る「実臨床での試行錯誤と効果を高める工夫」を実践する学びの場として、慢性症状の治療や腸内細菌叢医療に関心を持つ医療従事者の方はぜひご参加ください。

■ 開催日:2026年9月27日(日)
■ 会場:リーガロイヤルホテル大阪(オンライン同時配信・アーカイブ配信あり)
■ 主催:一般財団法人 腸内フローラ移植臨床研究会
■ 詳細・お申込みはこちら

関連記事

▶︎腸内フローラ移植が受けられる病院、または移植に関する相談ができる施設の一覧です。

関連記事

腸内フローラ、気になったら まずは相談から始めましょう

提携医療機関に相談する